―ハァ、ハァ…ハァ……
砂嵐さえ巻き起こりそうな荒野に、1つの影。
漆黒のマントを羽織り、紫紺の髪をしたその青年は荒い息を吐きながら、今まで自分が寄りかかっていた砂壁を右手でダンッと殴った。左手は胸をきつく抑えている。
青年の名はゼロス。赤眼の魔王シャブラニグドゥの5人の腹心…そのうちの1人、ゼラス=メタリオムによってこの世に創造された、おそらく彼の者達を除けば最高の魔力を誇る、たった1人の獣神官。
…だが、彼はまだ創られて日が浅かった。創られて日が浅く、故に己の持つ強大な魔力もまだ完璧には使いこなせずにいた。
だからこそ、自分達の対極…敵対すべき神族に隙を突かれてしまった。
今彼が苦しむのは、己の中に内包している聖気のせいだった。突然現れた一頭の黄金竜が、自分の身を全て聖なるエネルギーに変えてゼロスの中に取り入った為…。
現在、彼の中では本来持つ瘴気とそれに相反する聖気が激しく対立しあっていた。
(くっ…獣神官ともあろう者がなさけない…!)
ギリッと唇を噛み締めていたが不意に何かの視線を感じ、項垂れていた頭をあげると、そこにはキョトンとした表情で自分を見つめている幼い少女があった。
(幻…か?)
こんな荒れ果てた地にありえるはずもない光景にゼロスは一瞬そう考えたが、
「お兄ちゃん、だぁれ?」
呼びかけてくる声は、確かに目の前の少女が発したものだった。
「そちらこそ…ここは貴女のような娘さんには相応しくない場所のように思いますが…?」
彼がそう返すと、少女は急にシュンとした表情になり、
「フィリアね、空間移動の魔法のお勉強してたの…。お花畑、思い浮かべてたのに…間違っちゃったみたい。」
「ま、移動できただけでもいいじゃないですか…貴女は魔導士か何かにでもなりたいんですか?」
会話を続ける間にも身体を蝕む聖気に気を取られ、獣神官は適当に返事をし続けるが、フィリアと名乗る少女はそんなゼロスの問いにも律儀に答える。
「え?ううん、火竜王さまの巫女になるのには、いっぱいいっぱいお勉強しなきゃなの!」
彼女が何気に発した言葉に、だがゼロスはピクリと反応した。
「火竜王……貴女、黄金竜なんですか…?」
俄かに彼のアメジストの瞳に危険な色が宿るのにも気付かず、幼い少女は満面の笑みを浮かべながら、
「うん!フィリアね、お母さんみたいな巫女さんになるの!」
そう、答えた。
(何て都合のいい…。)
そしてゼロスは自分の内で展開されている矛盾を消し去る方法を思い付く。
内に取り込んでしまった『光』は『光』の元へ還す……強制的に。
自分の中に溜まってしまった聖気を受け入れられる“器”が丁度いいタイミングで現われてくれたのだ。
「フィリアさん…と言いましたね。…もっと高い法力を身につけたいですか?」
「うん!もっともっとお勉強して、お父さん位にすごい神聖魔法使えるようになるの!!」
「それじゃあ…少しながらですが、僕もお手伝いしてあげますよ……。」
「???」
頭にクエスチョンマークを浮かべている少女の手を引き、手近にあった洞窟へと誘い入れると、ゼロスはフィリアが羽織るマントのリボンを解いて脱がせた。
「お兄ちゃん…?」
不安げに見上げる蒼天の瞳を無視し、ワンピースのボタンを外しにかかる。途端に白くて柔らかい肌が露わになる。
「!」
常々、人前で素肌を晒してはならないと母に、女官達に言われてきた。だからいつも白いマントを身に纏って……その防御をあっさりと解きほどかれ、まだ発達途中の柔らかいふくらみに触れられて…その行為に、黄金竜の少女・フィリアは幼いながらにも恐怖心を覚えた。
「…っやだ、お兄ちゃん、止めて…!」
小さな手、折れそうな腕で必死に反抗するが、当然獣神官に通用するはずもなく。あっという間に全ての衣服を取り去られて、白くて細い裸体を目前の青年に晒していた。
「やだっ、恥ずかしいよぉ……んっ!」
抗議の声を上げる可愛らしい唇を自分のそれで塞いで、ゼロスは少女を毛布の敷いた地面に組み敷くと、その肢体を愛撫し始めた。愛撫を加える度、ビクンッと跳ねあがる幼い身体。次第に白い肌が淡く桃色に染まっていく…。
「キツイでしょうけど…我慢してくださいね。」
言って、己自身を少女のソコに宛がった。
まだ創造されて間も無くはあるが立派な青年の姿をした魔族と、小さな小さな…黄金竜の少女。
―少女が受け入れるには、青年のソレは大きすぎた。
「……っ!いやあぁぁっ!!痛ぁ…い、お父さん…お母さぁん――っ!!」
少女の悲痛な叫びが洞窟に反響する…長寿を誇る黄金竜としても幼すぎるその少女に、破瓜の痛みが容赦なく襲いかかる。獣神官と繋がった部分から赤い筋が太腿を伝う―…。
「やっ、やぁ…痛いよぉ……あっ、あ…んっ!」
青年が動くたび。悲鳴とも嬌声とも取れる声をあげて。
「フィリア…出しますよ。」
「……っ!!」
幼い肢体の奥深くに熱い迸りを受けて、少女の意識はそこで途切れた。
「…どうやら、聖気は完全に除外できたようですね…。」
闇の中の光は本来あるべき場所へ戻った…自分の内から。黄金竜の少女に移すことで。
「貴女に助けられたみたいですね……フィリアさん?」
目じりに涙を浮かべて眠る幼い…けれども確実に“女”になった娘に視線を向けて、獣神官は1人ごちた。
「今日起きたことは忘れさせてあげます…目覚めたとき、貴女は理由も分からずに神力上がってるでしょうけど。」
成人した黄金竜一頭分の聖気を受け入れて、確実に法力は高くなったはずだ。
「頑張って“火竜王の巫女”さんとやらになって、また僕の前に現われてくださいな。……また、抱いてさしあげますから。」
火竜王の巫女程の位になれば、いつかは魔族と…自分と関わることは必至。
「そのときは…ちゃんと僕の名前を呼びながら鳴いてくださいね?」